言葉を失う
海辺で 言葉を失う 歌を歌うため 言葉を失う
内陸に戻り 真実を見失う 言葉を失う そして歌人は歌う
詩人ジャーメイン・ドルーゲンブロート氏がスペインの雑誌社に毎週寄稿している1編の詩を対訳付で無料でお届けしております。 現在 「今週の詩」 は英語、スペイン語、オランダ語、中国語、ルーマニア語、マケドニア語、イタリア語、ギリシャ語、日本語に訳されています。
詩がお好きなご友人をご紹介下さい。
The poet Germain Droogenbroodt chooses one poem weekly for a Dutch magazine in Spain. This selected “Poem of the Week” is translated in English, Spanish, Dutch, Chinese, Romanian, Macedonian, Italian and Greek, and now Japanese.
Please inform your friends who love poems.
海辺で 言葉を失う 歌を歌うため 言葉を失う
内陸に戻り 真実を見失う 言葉を失う そして歌人は歌う
窓の向こう側の オレンジ樹々の庭
蕾の香りに うっとりと酔う
誰もいない 車もない 雲ひとつない天国
黒ツグミだけが 完璧な静けさを 賛嘆している
夜明けの光が 夜の痕跡を消す 容赦なく、時は流れるが 止まってほしいと願う カメラレンズに固定される写真の様に 樹々の実のように価値があるのは愛だから
夜に昇る月のように 愛おしい、君がいて、何が起ころうとも どこにいようとも、心に君を留め 君と恋に落ちてから、この世界は変わり 二つの心が温かく優しい家を見つけたから 希望の明かりを灯したり、影らしたり 日光が愛の心の琴線をもて遊ぶ
どう伝えよう?耐え難く近すぎて、 心に押し入ってくる 君は無言の口が担う名前 地球の手の中の海 触れてみる、触れている私の手を羨ましく思う 触れていて、触れたいと焦がれている
この無感情の時の恐れは一過性でなく 君は私の中の一部、一部は私の中のここにある その一部が魂の炎を燃やし 心の火を消すことがない
幼い頃から、空を訪れてみたかった 詩によって 飛行機によって 夢によって 辿りついた
死んだ時には青い世界へ移り住む 創造主と 永遠の邸宅をすでに手配している
到着が待ちきれない 人類全ての人々を知り、私の欲求をも知る神は 私の人間性をつねるような 虫けらであふれたこの地球上で 永遠には踊らせない
春には 失われた庭からバイオレットを 売る 夏には 折り紙の薔薇を 秋には 紫苑の花言葉を 冬には 窓に咲いた 亡き母の霜の花を だから私は生きる 朝から 晩まで 夜には 月や星を 私は褒める 太陽が昇って 私をその日に 売るまで
光に押されたら 別のドアを通ろう 薔薇の花びらに 朝に露が煌めく 海の泡
静かな夜に最初の音節のように 話そう 影についてや青い天使について
私の人生 光り輝き、ある瞬間に 白頭蓋骨 黄昏 池の小魚
黄金時代収穫の 水の中、芳香の中 甘いワインの中に泳ぐ
自身に課題を科す 言葉が足りなすぎる 綺麗に拭き取られた 黒板の 消されて出てきた チョークの粉と同じ
何かまだ残っている 喉の奥の骨の様に 引っかかっている
学校の黒板には 年配の校長が 難解な文章を書いている ”我が人生”
より時間が短く 授業終了の鐘が鳴るまで より減っていく単語 指の中で すり減るチョーク
君の体はハープだ サウンドボードに沿った弦 共鳴機 指で弾く ネック フラット シャープ 三角形の形 狩猟弓 トルバドゥール トルヴェール ミンネザング モンテヴェルディ グルック ベルリオーズ 特徴的なグリッサンド 共鳴を止めるのに 軽く片手を もしくは両手を 弦に置く
私は群れの牧人 群れは私の思想で、 私の思想はすべての感覚を司る 目で耳で 手と足で 鼻で口で考える
花を思うことは見て香ること 身を食べることは味を感じること
だから、楽しみが過ぎて悲しい 暑い日には 芝生の上で伸びをして 太陽が私の瞼を温めるのを感じ 全身が現実に沈むことを感じ 真の幸せを知る
大嘘の 足は 短くない。 あまりに 腕が長いから 足が短く 見えるだけだ。
大嘘の腕は 真実より向こう 彼方へ伸びて 足をより短くし 骸骨を生む
どれほど誤っていても、古臭くても 幾つかの言葉は 存在し続け、 不可視の道筋が 心に刻まれ 時間さえも 消すことができない
空が空洞だから 何千もの電気星と 誘惑する行商人で 地球が満たされた
司教は伝道をする 天使の歌の代わりにCDを流し 東方の三賢人の代わりに 王族のギフトを贈る
しかし子供は生まれ 救世主メシアは存在しないが その人は 天国が空洞でないと望む
とても疲れていて、変だ 暗い部屋の君の顔みたいな、 月が夜空に掛かる 月は輝く、白く、硬く、磨かれて まるで一片の金属のよう 早めの青い午後に 時々同様に青ざめ弱い 単色で 子供が塗ったような しかし優しさに溢れている
神の祝福を受けたその人は 政治政党のスローガンに従わない 会にも参加しないし ギャングと同席しないし まして大将の作戦会議に同席しない。 その人は兄弟をスパイしないし 友を裏切らない。 その人は宣伝の広告を読まない ましてテレビは見ない その人は泉近くに植えられた 木のようだ。
冷たい日の淵に 顔をうずめる 息は何も温めない 幸せの島の淵 足元のすぐ下 流れる一粒の涙が 時間を肥やす
すべての鏡 裏側さえも形を留めない 継がれない名前 消えていく足跡 あなたの 私は 私の あなたは 目に見えない小道 私たちを救う
子供の時、近所のアリヤ地区で 手も目も失った 人形を持っていた
誰のものか確かでなく その人形が私のものだったのか 詩から来ているのか
ママが死んで 誰にも尋ねられない
愛するなら、私の全てを 光や影の一部でなく 愛するなら、黒も白も 灰色も緑も 金も茶色も 愛して 毎日愛して 毎夜愛して 朝には大きく開いた窓のそばで
愛するなら、そのままの私を愛して。 全てを愛するか…全く愛さないか。
これは海岸から海岸への 昨日から一寸前の 足跡を残さない 旅だ。
水しぶきと砕ける波に委ねるか、 丸い石に刻まれるか? 飛んでいる鳥に委ねるか、 松の木に刻まれるか?
残るのは、 存在しないところに記録された 旅人の名。
海上に明月が生まれ、 天空を輝かせる。 恋人は離れた夜を嫌うが、 夕が相思相愛を呼び戻した。
蝋燭を吹き消し、 月の光を楽しむ。 露が濃くなり、 上着を羽織った。
手に溢れる月の光を 君に贈れないから、 夢で君に会いたいから、 眠りに帰ろう。
感謝します森よ、私に眼を返してくれること あなたの芝生に横たわり、 眼をとじるときにも。
私に手がある理由をくれること 足が土につまづいて あなたの根を掴むため。
漆黒の樹皮の空の向こうに 小さな月のようにあわられる 忘れていた私の魂を 見詰めている 目しか見えないものからの、 知らない音からの、 夜に歩く怖さを 克服することを教えてくれた。
何かの兆候か、 もしくは 唯の目の保養
石は長く留まる 静けさと沈黙で横たわり 道の端を 見ることもない
無音 無の場 無言 望まれず 石は残る 語り手もなくその物語は続く
愛もなく 真実もなく ある国から誰かが書いた
もし応えがたったひとつしかなければ お願いです 歌ってください、国のためではなく 愛の歌を
干ばつのように、雨を 餓えた人のように、一片の食物を 溺れた人のように、救助を 死にゆく人のように、生れ変わりを⋯ 私は君を待つ
海上には雲 海辺には銀製の船 海中には黄色の魚 海底には青藻
海岸近くに 考え 静止している 裸の男
雲になるか それとも船? 魚になるか それとも海藻?
否、少年よ: 雲と、船と、魚と海藻をもつ 海となれ
あなたが私を見るとき 私の眼は鍵になる 壁は秘密をもち 恐れは言葉に、詩になる。 あなただけが私の記憶を作る 心奪う旅行者、 絶えない炎
欲しいのはどこでも歌えること 欲しいのは羽のゆりかご 欲しいのは足の間に天国のかけら 欲しいのは口の中に蜂の群 欲しいのは体に地球とジャスミンの香り 欲しいのは足先からたち昇る燻製の舌 欲しいのは広げた羽の付いた肘 欲しいのはひばりの羽と肘を取替えること 夜明けに
ひと飛び、すべての方向が変わった 雨の(生きている!)鉄の道は 私たちを夜明けに導き あなたの夢を見た 地球全体は不眠に陥り 数世代の木がたわみ 空では雲が混み合い 夜に野生のインスピレーションが包み、私たちは恋に落ちた
黄土壁に はめ込まれている八口 奇跡の様に 水が溢れている。 巡礼者は —敬虔に頭を下げ— 手を伸ばし 祈る。 「純粋で透明な水 乾き以上に 私を潤す」
母を埋葬し 破裂弾のシャワーの下を墓地から走り戻った後 縒れた布の中の兄弟を兵士が連れて戻し 彼のライフルを兵士へ返した後 我が子の目の中に炎を見て ぞっとするネズミらと穴蔵へ飛び込んだ後 恐怖で誰かわからない老婆の顔を ぼろ切れで拭った後 街角で餓えた犬がどのように 自分の傷の血を舐めるかを見た後 これらすべての後に 余りに空っぽで面白くなくを忘れさせてくれる 記者のように詩を書きたい その瞬間道で誰かが尋ねる、 なぜ冷淡な記者のように詩を書く?
愛情の姿、想の中、空からの雪の舞い時。 懐疑的な柔らかな目、自身を反射し 木々の間をはらはらと 舞い降りる —ほら、天国の崩壊!— そして男たちは木々になり 雪の抱擁を受け包み込まれる
昨夜は私の上で眠りに落ちた! そして今日は寝返りを打ち 眠りについたふり。 復活の日まで共に。 あの言葉をまた聞きたい 眠っている君が私に言った昨夜の言葉!
瓶の中のメッセージ 未知へのポエム
未来の国へ 漂流するんだろう
海流の迷宮に 彷徨うかもしれない
海藻の森を横切り 深い納骨洞 何千もの港の幻 無数の星の下で 沈んだストーリーの数々 これを読む人はこの旅をするんだろう
私たちは太陽の渦について何も知らない 最長の時間も、 雲々、上空の乱気流についても 香るこの地で 甘い樫と栗の木の漂う君の血の ことばの水晶だけが光っている。 君の瞳の中、 ツバメが巣を作るところへ 春の渡り 静かに決意する時 君の家で、紫の影の呼吸をする 無邪気なひかり そして君は書く、夜に、君の歌を 晒された角のよう
眠っている時に 青い月の下、 トラと薔薇が愛を交わすのが聞こえ ツグミのさえずりが聞こえ、 飛ぶ鳥の香りを感じる。 そしてトラが薔薇に 言うのが聞こえる 「あなたを七晩夢に見ないといけない 優しさと幻想の魔法が 消えないように、 触れてはいけない 私の夢が夜明けまで続くのかを 知る唯一の方法だから」
今夜は どう書くべきかわからない これは心の新境地か?
今夜は 私がうんざりしているから 文字たちは頭痛持ち
今夜は 心に一つも考えが浮かばない 真っ白な紙 私は、待って、待って 思考の空から 文字が降りてきた そして私の魂の 亀裂を充した・・・
高い樹の上に ある鳥は巣を作った その樹は神に どうか私の方向に嵐を呼ばないでくださいと 神に祈った
その二本の樹々はひどく愛し合っていた 妬みにもえた木こりが 二本の樹々を切り倒し 家へ持ち帰った 偶然に炉の中で再会でき 幸福に抱き合い 共に燃やされた
恋人 愛される人 めまい そよ風 水の反射 そして今のところ私たちを覆っている 蒸気のような 漠然とした あの白い雲に
私は雲でした そして雨 そして海 そして月になりたかった そして壁 そしてあなた。
ジャーメイン氏へ贈る
樹は風なしでは無だ 風が動きに印象を与えないとしたら 存在も確かではない その樹は 樹液で自身を支え 火が燃やし、 風が嵐の夜に破壊を駆り立てる木材で その幹、その根、その呼吸よりも イメージ、詩、写真、文書と 同じ瞬間にだけ存在する。
風に、 編み出す人の視線に、 樹はしなる。
その樹は風の中で、もしくは思想で動くとき 生まれ出る、
詩が私たちを感動させる時の様
地球よ、あなたはまだ 原始光の火花以上、
宇宙にさ迷う 殺がれた岩石以上の存在なのか?
黄金の子牛が 天使の翼をもがいた
そして—預言者の様に見せかけ— 支配者は真実の様に嘘を広げる
馴染みある羽ばたきが 微かに聞こえる 心の二重の鼓動
雪が降るように 静かに来た そして朝に心は 真っ白になっていて なんと言ったらいいか
一番小さいスミレのように 私を覆った そしてアオガラの歌声に 地球の白い息の 開きを感じた
林檎の木のように 君の抱擁に揺れる
今夜の月はなんと穏やかな
君の影は 修道院の壁に沿って 角のあたり渋々歩く 石から石へ 影跡からはずれようと 通りすぎる間 強く張り詰めている わたしの影のことを 締めつけている様
あなたが言うことより いつも多くを 聞いている
まるであなたは 千の舌を持ち話したいみたい それでも多くを 抑えている様だから
運動場の子供が 戦争ごっこ 甲高い大声で 戦争の真似事
窓から 彼らに声をかける 今回は平和ごっこをしなさい! 彼らの騒ぎが 少しは収まることを願って
運動場から子供たちが 熱狂的な様子で 「平和を祈ろう!」 それぞれが 大声で叫ぶ
そしてもう一度 考え議論して どうするべきかを 思慮している それから
小さい子供が 私の窓を覗いて 「叔父さん、平和を祈るってどうするの?」
前夜に 喉の渇きを癒したように 現れる
朝の光と聞きなれない 鳥のさえずりで 一日が始まる
遠くの 蘆笛の 揺れる音
シバ神か、仏か その様な神を参る 朝の祈祷者
そしてこの朝穏やかさが訪れる まるで長い時間を経て 人類がついに 平和に辿り着いたかのように
海とカモメの夜に あなたが私の元に戻ったら あなたの目尻に キスしてみよう あなたの嘆き、 失われた浜の 虚空と唇の疑わしさは 私の口を乾ききらす
二人には七夜だけだったかも わからない 数えていなかったから 或いは少なくとも六と言おうか ひょっとすると九 わからない でもそれらは私の宝物 一番長い愛だった 多分 四夜か五夜ほどだったか 正確にはそれくらいか 多分 それだけで生きられた 人生で思い切り 大きな愛
音もたてずに 雪の一ひらのように クリスマスが来た 夜が交わるところで 静寂の静止と合流した 旅に疲れても 腹を空かせた子供に母乳を与えた その神聖な夕べは 人々の客だった 奇跡を携えるクリスマスは 長く留まらなかった、 希望と歌が 詰まった袋をとじて、去った 皮肉だけ 持ちされなかった 飾りの一つとして クリスマスツリーの枝に掛けられた
もし生まれ変わるなら、ここへ戻して もしも生まれ変わるなら、ここへ戻して. . . 同じ門をくぐり戻るのでしょうか 同じ雫を 同じ虹を 同じ町に流れ着く 同じ荒れた小川を見れるのでしょうか?
同じ花は咲くのでしょうか 同じ蜂が蜜を吸い、 私の望みを知り 蜂蜜を作るのでしょうか 私の心はまた山を登り 興奮を廻らせ 喜びを基礎にした 同じ苦しみで 家を立てるのでしょうか?
眼は精神の入り口である。 だから今、知恵を働かせるため、閉じた方がいい 日々を冷淡に進める⋯
そして心のドア⋯耳; 知恵を働かせるため、耳も閉じよう 亡き人のため、老人のために祈ろう
彼らは愛されるべきである 少しの愛、生命の保証、 法やお触れは必要ない
白痴で心なしに生きるより 最小限の生命のかけらでいたい
訪ねた私を迎える 大きく手を広げた母 来れないという電話に応えた時の 優しい言葉の母 話をしたくても、もうできなかった 顔を横に向けた母 最後の挨拶に遅すぎて着いた時の 目を閉じた母
彼の瞳と彼女の泪の間は いつもそのスーツケースと 数え切れない旅行による遠距離がある
洞察に至るまで 詩の火に至るまで 異国において
このもつれた世界の 秩序は保たれていると 自らを欺き 信じ込ませる
飢えた子供が 泣いているのが 聞こえる
死んでいく兵士が 見える
地球の心が 縮こまっているのを 感じる
彼らは必要のないものを売る それでも君は買う 彼らは好きでない耳障りな歌を歌う それでも君は聴く
花々のささやきは いつ聞くのか?
外見のきらびやかさを押付け 同様になるため 彼らから奪い取ろうとする 脳から理論を搾り取る 彼らを真似したら 己を高めてくれると君は信じる
鳥たちのさえずりは いつ聞くのか?
マリア・ミラーリアへ
薄暗い夕方に 疲れ果てた鳥が虚しく 眠る場所を探している時に 君に愛の詩を詠もう
月の灯火が 夜に微光を捧げる時 君に愛の詩を詠もう
太陽が夜明けの希望を 赤色に染める時 君に愛の詩を詠もう
心が皺寄り顔でも 優しい風が撫でる時 君に愛の詩を詠もう
上空の高い高い所で 二つの雲が 愛のキスで抱擁する時 君に愛の詩を詠もう
来るな、死神よ、まだ来るな 望む地へ辿り着く為 長い梯子を登らなくてはならない まだ法の真理に辿り着いていない せねば、せねば、ここで成すべき事がある。
借りがあるから返さなければいけない 影の様に通り過ぎるより何かの為にここにいる 私の中から現れようとしている光がある まだ来るな、時間を与えよ、私に
喜びの中 自己を追究する
すぐに 終わりを迎える
憂鬱は 遅々と 薄れていく
自己を追究する 言葉の中に 自己を見出す
アルトゥーロ・コルクエラ氏を悼んで
時間は数字で飾られ進む 〜ルイス・デ・ゴンゴラ〜
尖ったくちばしの鳥、その時計の分針 まるでハチドリ 白磁の平面を回転、壁に囚われている 二針目が後を追う、むしられた雛鳥のよう 共に、ローマ数字を羽織り、時間を指し示す。 人間の心臓のように、 生涯は過ぎ脈拍は低下すると 告げている。
無音の 彼女の細いシルエットは 床に触れない
浮かび アンクレットだけが 優雅な歩みに反して鳴る
(目を閉じる)
彼女がスペインのジプシー酒場にあらわれて 純白のソレアを ギターのブラシ演奏で情熱的に踊る
情熱、誘惑と色彩が渦巻き 眼も心も盲目に
裸足のダンスに 木のフロアさえ願望で震える
彼女の足踏み、スキップ、漂い 深紅のドレスを左へ振り、また右へ ちらほら一見を露にする
—それだけ—
夢でさえも見せない
月が御手伝いさんを呼んで 暗黒の円蓋に 輝く真珠を留めるとき 私に愛の詩を詠んで
風が優しく 樹々の樹上を揺さぶり ロマンチックな小夜曲を奏でるとき 私に愛の詩を詠んで
波が曙光の中 喜びあふれる子供達のように 追いかけっこをするとき 私に愛の言葉を詠んで
伝達鳥のように 窓辺にやってきて 歌を歌い あなたについて話してくれる ひよことスズメたちに 世界で最も美しい愛の韻をささやいて
朝霧が どこまでも続く草原の まだ眠そうな花々を 軽く優しく目覚めさせるとき 私に世界で一番甘い愛の言葉を集めて
地平線の太陽が 果てしない抱擁で 海にキスをするとき それからまた愛の言葉を私に詠んで
無風 何度も何度も懇願してきた そしていつも怒り狂う顔を 見てきた
これが最後だ 私の手を取り 国境まで 運んでほしいと 懇願する しかし国境警備隊へ 引き渡さないでほしい 我らのオリーブの樹々の間の ハンモックのところへ 寝かせてほしい なだめ 口笛の 子守唄を。
ジャーメイン・ドルーゲンブロート氏へ捧げる
他銀河より 降りかかる 人工的な イタカの太陽
光で 囲まれた 白い円形のよう
夜に ゴーストたちの ひとつが魂を 浪費したよう
神が、 無意識に、 夜明けで作った 楽園
ピーター・ヘルトリング氏を悼んで
今は、私の物語に 文章はもう 舞い降りない。 今は話し、今は 自ら呼吸する、 今は、私から 消え去る世界に、今は 私は存在する、 己を忘れ、 今は青ざめる かつての文章 今は、捨てられる名前 そしてもう 今は存在しない
君の笑顔は 庭全体を輝かせるなんて もちろん大げさだけど 本当に見たんだ 君が近づき 一つ花が咲いたのを
素肌を目覚めさせ 繰り返し満たすその接触で 生き返らせるその言葉を 君は気にいるでしょう
瞳に瞳を感じられること 腕に腕を感じられること 灰色のアスファルトの道を 昼の疲れた光の中歩くこと
それぞれの夜明けに戻り 記憶の差の間の失われた瞬間を見つける それらの旅行の繰返しを気にいるでしょう
それぞれの瞬間の呼吸を感じさせ 呼吸するその空間に入らせるその言葉を 君は気にいるでしょう
昼のうちに 心に落ちた詩を 夕刻に書く。 道を歩く 人々の詩。 船乗りと 売春婦の詩。 正午の広場での 犬の詩。 生きることの 石、パン、団結の しがらみが 夜に重くのしかかる。 そして、 労働者の手に書く そして恋人たちの 瞳について書く。 そして、夕刻に、太陽の下に 雨の日に書く。 そして、書く。
細かく引き裂かれあまりに無駄な 塩で焦がした数え切れない日々、 その直後の永久的な写真、 もし遅すぎなければ、 私の体内の状態を推測できた 私の身体の刺青は異国の地の太陽の様に輝く。 浴室の死んだ幾つもの星 海の底の棘を探しに行き あなたを許してあげられた。 無限を断ち切り、壁に貼付け、 待ち、惑星たちがぶつかり合う事を願えた。
そしてなんでもない事で壊れた この些細な事にどれだけ犠牲を払ったのか あなたへ電話して伝えられた。
かつてなく、わたしたち自身の写真を撮る。
お互いに肩組をして いつも笑顔で 絶えず幸せの様子
永遠に続くのかもしれないと 見事な姿勢で自身を写し込む。
でもその写真に 心を埋め込めたら どうなるだろう?
リリアンへ
手が どれほど寂しいか 心が どれほど思慕しているか 不意に気づく時
意識的だったのかどうか 置き去りにした 場所や時間に どう帰ろう
君の眠りの 夢の戸口で 窓に映るような明けの明星が 君の顔に現れるのを静かに見つめて待つ。 海辺で 東に眼を凝らし 恍惚状態で不寝の番の時間を過ごし、 明け方の光に 浸かるのを楽しみにしている 瞑想する修行者のように。
私の眼で 少し開いた君の唇に花が開く 君の最初の笑顔を飲むんだ まるで花の蕾、 それが私の願い。
問題はこのように解決されると思っていた。 真夜中に来ないであろう最終バスを 駅で待つ人々の集団のように 最初の数人から、どんどん増える。 お互いに仲良くなり 共に全てを変えられ 新しい世界を始められる機会だった。
しかし散りじりに。 (恩寵の時は過ぎた。もう再び 起こらない。)それぞれが己の道を行く。 おのおのはまた 片面を上にしたドミノになり 繰り返し続くゲームで 合致するもう1片を探す
その時その時に 愛は特有の ことばを持つ 例えば、私の肩に寄り添う あなたのこめかみの柔らかい軽さや あなたのドレスが滑り落ちる その速さ
行かないで欲しいかのように 私の足元に降着するまで 川や人々の流れを越え いくつもの寺や城を通り過ぎ 民主制のように飛ぶための 羽を欲しがる私の思想を ついばむ鳥達に 何を言いましょう
かつて蝶であったのかな
産まれる前 木であったか 星であったか
もう忘れてしまった
でもわかることは かつてそうであったように 未来にも私は存在する
永遠の中の 瞬きの一瞬に
詩心は 家に窓があるように 自然的
窓硝子のように 人工的
窓の向こう側の世界のように 偶発的
科学のように 論理的
知識獲得と 喪失の 接点にあるようだ
何時でも舞い戻り私を抱きしめて 身体の記憶が目覚め 昔の憧れで再び血が騒ぎ始める時 唇と肌が思い出し この手でまるで触れているかのように感じる時 愛おしい感覚が戻り私を包み込む
唇と肌が思い出したら、 夜に、何時でも舞い戻り私を抱きしめて
貴方が守ってくれる魔法の場所へ のがれる 愛する人よ
草たちも お辞儀する 生きている森で
それは この上なく美しいもの
星を見つめていた 夜が明けるまで 朝の曙色で、夜の虹彩が閉じた
今見た夢は ただの夢でなく
バラの葉脈の 脈相は
未来を物語る
私は砂漠の砂 渇いた砂漠 君の唇はオアシス 私の飲めない所にある
唇:オアシスは受け入れる 砂漠のすべての砂を
枯渇した世界の 真ん中の湿ったところ 君の身体、君の身体は もう二度と二人のものとならない
身体:渇きと太陽で枯渇した私を潤した 井戸は閉じた
その人は朝に泣き 昼に泣き 夕方に泣いた 朝、息子を失い 昼、もう一人の息子を失い 夕方、最後の家族を失った 翌朝、人々はその人のために泣き 昼にその人々のために別の人々が泣き 夜には泣き声は聞こえなくなった 街中が血の海だった
毎日 仕事へ行く 妻、オルガのため オルガが買物するに足る金を持てるよう
どうにかしないといけない 週末が近い 日曜日、子供達は食べたいだろう 私たちはこの悪習を 打ち破れずにいる
ねえ、 あなたはこれまでになかった と言う あの夜以上に幸福であったことはないと 決して! 私にそう言った その瞬間に 伝えないと決めたの 自分自身を欺いたのか けれどたぶん 確かに想う あの夜は わたしの人生で最も美しい夜
コンスタンスは筆をとった
果物や野菜が表紙の スケッチブック
さくらんぼを緑色に 塗りつけ バナナは青色に
レタスにおいては黄金色で まるで天国を探しているような筆使い
そして私は想う あまりに現実的でやつれ果ててしまっている 大人たちを
守護者に なれる ように あなたの喜びを 預けてください
祈りが 聞こえる 惑星を 周回し 星屑に しています
風の中 散りじりの マントラが 共鳴する時 黄金の穂が 落ちて
そして喜びが 舞い戻る
パンの 香りに
バレンタインデーの日に
満たされた 記憶の中の 目には見えないページ
暗号化され 他の誰も 解読できない
いく度もいく度も 書きなおされた
こころの中の 粘土板
熱い それは恋
愛へ向け ひた走る
とはいえすべての航行が 抱擁が 待っている 桟橋にはたどりつかない
毎晩 難破船があり
毎朝 浜へ 集められる
沈んだ船体と あふれる 想いが
ひとりぼっち 澱んだ湖は みるみるうちに縮む
きみは岩 鈍い響きをたてる
でもきみは愛しいひと 溺れさせることを 抑えられない
ある時には 至極やさしい ひとことが 欲しい たったひとこと 寒さに耐え 恐怖に耐えられる ひとことが 私を暖め 息苦しさから開放する 重さのないひとこと 平和のひとつぶだけ 背負おう 瞬く間に 飛び去ってしまわないように
ルビーを見つけた 折り重なった石の中で 珍しく光り輝いていた 単なる小石ですよ と、専門家は言う 単なる小石でも 何か特別なものになりたい 原子の唯一の塊 産業の堆積物 何万もの波の数が仕上げた「磨かれた技」 選ばれたと 見て、感じて 何か特別なものになりたい
未来に何が 待ち受けているのか
さらなる戦争 毒ある野望を持つ国々の さりげない会話 哀れな政治家たちよ どこからどこへ向かうというのか 答えはない 一瞬で 高く登ったキノコ雲は 全てを燃え尽くす
ひとみの中の きらめく月光
優しくなでる風 ある時はひとこと
手でつつみこむ 抱擁のような
やさしい光 私の心にたいせつなもの
地球上を歩く たった一人で 黒い杖を振り上げ 硬い、冷たい地表に 強く押しつける 地球の裏側の人々は このわずかな音を聞きとり 私の存在を感じるかもしれない
松の木は孤独に立つ 北の切り立った丘に 安らかに目を閉じ 氷や雪の白い毛布で 覆われている 松の木は椰子の木を夢見る それは東の遥か遠くにある 孤独でつらく声にならない唸り この今も燃えている崖
ツイッターなし フェイスブックなし メールなし メッセージなし
極めて賢いスマートフォンより 賢明なのは
沈黙
あなたから送られてきた手紙 黄色と赤の切手が貼ってあり 心の鉢に 植えました 毎日 水をあげたら あなたの手紙は 私の中で育ち 美しくて 悲しい手紙 あなたの匂いがする 手紙 もっと早くに するべきでした 遅すぎる 今ではなくて
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