全ての詩

私は詩人ではなく一翻訳者でしかありません。
このような不確かな世の中であるからこそ 世界からの正確な情報をお届けできるようでありたいと願います。

世界中の子供たちに、自由と平和がもたらされますように。

2017年1月 京都
リボアル 菜巳乃

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友人、また読者の皆様、
ポイントエディションは10月29日から11月12日、アントワープにおいて国際詩のコレクションを展示いたします。12月1日の”美しい詩”ドン・ルイージ・ディ・リエグロ国際詩賞受賞のためにベルギーからイタリアへ渡ります。次回の「今週の詩」は11月末にお届け予定です。
詩的な挨拶とともに
ジャーメイン

想い

彼の瞳と彼女の泪の間は いつもそのスーツケースと 数え切れない旅行による遠距離がある

洞察に至るまで 詩の火に至るまで 異国において

原作
フアッド・リフカفؤاد رفقة、レバノン(1930–2011)
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

撮影:ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt

もつれ

このもつれた世界の 秩序は保たれていると 自らを欺き 信じ込ませる

飢えた子供が 泣いているのが 聞こえる

死んでいく兵士が 見える

地球の心が 縮こまっているのを 感じる

原作
ローゼ・アウスレンダーRose Ausländer(1901–1988)
原題
Wirwar
出典
Mein Atem heißt jetzt』、Fischer Verlag
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

友人、また読者の皆様、
9月17日から20日までミカエルエミネスク国際詩祭に参加し、(国際詩の貢献者として2度目の受賞をいたしました。)十数名もの昔からの、また新しい詩人に出会うことができ、ギリシャ語、トルコ語、ウクライナ語、ヘブライ語が新たに追加され「今週の詩」は17言語に翻訳、公開される予定です。
ジャーメイン
Edvard Much

間違えた道

彼らは必要のないものを売る それでも君は買う 彼らは好きでない耳障りな歌を歌う それでも君は聴く

花々のささやきは いつ聞くのか?

外見のきらびやかさを押付け 同様になるため 彼らから奪い取ろうとする 脳から理論を搾り取る 彼らを真似したら 己を高めてくれると君は信じる

鳥たちのさえずりは いつ聞くのか?

原作
マノリス(エマニュエル・アリギザキス)Manolis (Emmanuel Aligizakis)、クレタ島(1947)
原題
Wrong Path
詩人マノリスはギリシャ語版「今週の詩」の翻訳者です
出典
Nostos and Algos』、Ekstasis Editions
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt

君に詠む詩

マリア・ミラーリアへ

薄暗い夕方に 疲れ果てた鳥が虚しく 眠る場所を探している時に 君に愛の詩を詠もう

月の灯火が 夜に微光を捧げる時 君に愛の詩を詠もう

太陽が夜明けの希望を 赤色に染める時 君に愛の詩を詠もう

心が皺寄り顔でも 優しい風が撫でる時 君に愛の詩を詠もう

上空の高い高い所で 二つの雲が 愛のキスで抱擁する時 君に愛の詩を詠もう

原作
ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt
原題
I Will Write for You
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

トマス・ノルデンThomas Nolden

来るな、死神よ、まだ来るな 望む地へ辿り着く為 長い梯子を登らなくてはならない まだ法の真理に辿り着いていない せねば、せねば、ここで成すべき事がある。

借りがあるから返さなければいけない 影の様に通り過ぎるより何かの為にここにいる 私の中から現れようとしている光がある まだ来るな、時間を与えよ、私に

原作
コンチャ メンデスConcha Méndez、マドリッド–メキシコシティ(1898–1986)
原題
No vengas, Muerte, todavía
出典
『Entre el soñar y el vivir (Cuadernos de Poesía)』、1981
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

ヴェルナー・ベルゲスWerner Berges

自己を追究する

喜びの中 自己を追究する

すぐに 終わりを迎える

憂鬱は 遅々と 薄れていく

自己を追究する 言葉の中に 自己を見出す

原作
ローゼ・アウスレンダーRose Ausländer(1901–1988)
原題
Du suchst dich
出典
『Ich höre das Herz des Oleanders: Gedichte 1977-1979』、Fischer Verlag
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

プラハ腕時計の寓話

アルトゥーロ・コルクエラ氏を悼んで

時間は数字で飾られ進む         〜ルイス・デ・ゴンゴラ〜

尖ったくちばしの鳥、その時計の分針 まるでハチドリ 白磁の平面を回転、壁に囚われている 二針目が後を追う、むしられた雛鳥のよう 共に、ローマ数字を羽織り、時間を指し示す。 人間の心臓のように、 生涯は過ぎ脈拍は低下すると 告げている。

原作
アルトゥーロ・コルクエラArturo Corcuera、ペルー(1935–2017.08.20)
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

フランダースの”フラメンコ”へ敬意を込め、世界的に有名なスペインのフラメンコギタリスト、セラニートがこの詩「インディアンジプシーウーマン」に触発され曲を書きました。2017年スペインアルテアのイタカでの詩的な夜のコンサートで詩と音楽が朗読、演奏されています。
ジャン リュック・ロペスJean-Luc Lopez

インディアン ジプシーウーマン

無音の 彼女の細いシルエットは 床に触れない

浮かび アンクレットだけが 優雅な歩みに反して鳴る

(目を閉じる)

彼女がスペインのジプシー酒場にあらわれて 純白のソレアを ギターのブラシ演奏で情熱的に踊る

情熱、誘惑と色彩が渦巻き 眼も心も盲目に

裸足のダンスに 木のフロアさえ願望で震える

彼女の足踏み、スキップ、漂い 深紅のドレスを左へ振り、また右へ ちらほら一見を露にする

—それだけ—

夢でさえも見せない

原作
ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt
原題
The Indian Gypsy Woman
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

撮影:ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt

私に詠んで

月が御手伝いさんを呼んで 暗黒の円蓋に 輝く真珠を留めるとき 私に愛の詩を詠んで

風が優しく 樹々の樹上を揺さぶり ロマンチックな小夜曲を奏でるとき 私に愛の詩を詠んで

波が曙光の中 喜びあふれる子供達のように 追いかけっこをするとき 私に愛の言葉を詠んで

伝達鳥のように 窓辺にやってきて 歌を歌い あなたについて話してくれる ひよことスズメたちに 世界で最も美しい愛の韻をささやいて

朝霧が どこまでも続く草原の まだ眠そうな花々を 軽く優しく目覚めさせるとき 私に世界で一番甘い愛の言葉を集めて

地平線の太陽が 果てしない抱擁で 海にキスをするとき それからまた愛の言葉を私に詠んで

原作
マリア・ミラーリアMaria Miraglia、イタリア
原題
Scrivi per me
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

読者の皆様、先週よりクルド人詩人のフセインハバッシュが今週の詩をクルド語に翻訳しクルドの雑誌に発表を始めました。これで今週の詩は13の言語に翻訳をされます。紹介として彼の詩を今週の詩として選び翻訳しました。
イナヤト・アタールعنايت عطار

最後の願い

無風 何度も何度も懇願してきた そしていつも怒り狂う顔を 見てきた

これが最後だ 私の手を取り 国境まで 運んでほしいと 懇願する しかし国境警備隊へ 引き渡さないでほしい 我らのオリーブの樹々の間の ハンモックのところへ 寝かせてほしい なだめ 口笛の 子守唄を。

原作
フセインハバシュحسين حبش、クルディスタン(1948)
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

イタカ
撮影:ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt

イタカ

ジャーメイン・ドルーゲンブロート氏へ捧げる

他銀河より 降りかかる 人工的な イタカの太陽

光で 囲まれた 白い円形のよう

夜に ゴーストたちの ひとつが魂を 浪費したよう

神が、 無意識に、 夜明けで作った 楽園

原作
イネス・ブランコInés Blanko、ボゴタ、クルンビア
原題
Ithaca
日本語翻訳
リボアル菜巳乃
イタカ:ギリシア神話によると、イタカはギリシャのヒーローオデュッセウスの王国であり、またギリシャの島の名前です。 今年ノーベル文学賞にノミネートされた詩人ジャーメイン・ドルーゲンブロート氏が毎年恒例の詩的な夜のコンサートを企画し開催している自宅につけた名前でもあります。

撮影:ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt

今は

ピーター・ヘルトリング氏を悼んで

今は、私の物語に 文章はもう 舞い降りない。 今は話し、今は 自ら呼吸する、 今は、私から 消え去る世界に、今は 私は存在する、 己を忘れ、 今は青ざめる かつての文章 今は、捨てられる名前 そしてもう 今は存在しない

原作
ピーター・ヘルトリングPeter Härtling、ドイツ(1933–2017.07.10)
原題
Jetzt
出典
Das Land, das ich erdachte : Gedichte 1990–1993』、Radius Verlag
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

撮影:ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt

君の笑顔は 庭全体を輝かせるなんて もちろん大げさだけど 本当に見たんだ 君が近づき 一つ花が咲いたのを

原作
ウィリアム・マーWilliam Marr、台湾(1938)
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

オットー・ミューラーOtto Mueller

素肌を目覚めさせ 繰り返し満たすその接触で 生き返らせるその言葉を 君は気にいるでしょう

瞳に瞳を感じられること 腕に腕を感じられること 灰色のアスファルトの道を 昼の疲れた光の中歩くこと

それぞれの夜明けに戻り 記憶の差の間の失われた瞬間を見つける それらの旅行の繰返しを気にいるでしょう

それぞれの瞬間の呼吸を感じさせ 呼吸するその空間に入らせるその言葉を 君は気にいるでしょう

原作
テレサ・パスカルTeresa Pasqual、スペイン
出典
Les Hores
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

夜に書く

昼のうちに 心に落ちた詩を 夕刻に書く。 道を歩く 人々の詩。 船乗りと 売春婦の詩。 正午の広場での 犬の詩。 生きることの 石、パン、団結の しがらみが 夜に重くのしかかる。 そして、 労働者の手に書く そして恋人たちの 瞳について書く。 そして、夕刻に、太陽の下に 雨の日に書く。 そして、書く。

原作
ホセ・エドゥアルド・デグラジアJosé Eduardo Degrazia、ブラジル
原題
Eu escrevo na noite
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

浪費もしくは小さな偽り

細かく引き裂かれあまりに無駄な 塩で焦がした数え切れない日々、 その直後の永久的な写真、 もし遅すぎなければ、 私の体内の状態を推測できた 私の身体の刺青は異国の地の太陽の様に輝く。 浴室の死んだ幾つもの星 海の底の棘を探しに行き あなたを許してあげられた。 無限を断ち切り、壁に貼付け、 待ち、惑星たちがぶつかり合う事を願えた。

そしてなんでもない事で壊れた この些細な事にどれだけ犠牲を払ったのか あなたへ電話して伝えられた。

原作
ローラ・ヤサンLaura Yasan、アルゼンチン(1960)
原題
Gastos inútiles o mínimas estafas
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

心の火
Wernin

心のカメラ

かつてなく、わたしたち自身の写真を撮る。

お互いに肩組をして いつも笑顔で 絶えず幸せの様子

永遠に続くのかもしれないと 見事な姿勢で自身を写し込む。

でもその写真に 心を埋め込めたら どうなるだろう?

原作
イオン・ディアコネスクIon Deaconescu、ルーマニア(1947)
出典
Ferestre Zidite』、Editura Cluj-Napoca2015
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

友人、また読者の皆様、
イタリアから戻りました。私のお気に入りのコモ湖で新しい幾つかの詩を書きあげ、最新詩集『一年草の花時間』を立ち上げました。新しい詩の一つをお届けいたします。どうぞお楽しみください。詩的な挨拶とともに
ジャーメイン
イタカの夜明け
撮影:ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt

我家へ

リリアンへ

手が どれほど寂しいか 心が どれほど思慕しているか 不意に気づく時

意識的だったのかどうか  置き去りにした 場所や時間に どう帰ろう

原作
ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt
原題
Homewards
ポグナナ、コモ湖、イタリア、2016年5月29日
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

待ち焦がれる

君の眠りの 夢の戸口で 窓に映るような明けの明星が 君の顔に現れるのを静かに見つめて待つ。 海辺で 東に眼を凝らし 恍惚状態で不寝の番の時間を過ごし、 明け方の光に 浸かるのを楽しみにしている 瞑想する修行者のように。

私の眼で 少し開いた君の唇に花が開く 君の最初の笑顔を飲むんだ まるで花の蕾、 それが私の願い。

原作
ラビンドラナート・タゴールরবীন্দ্রনাথ ঠাকুর、India(1861–1941)
原題
Awaiting
出典
Later Poems of Tagore』、Orient Paperbacks1978
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

サン・ラザール駅
クロード・モネClaude Monet

恩寵の時

問題はこのように解決されると思っていた。 真夜中に来ないであろう最終バスを 駅で待つ人々の集団のように 最初の数人から、どんどん増える。 お互いに仲良くなり 共に全てを変えられ 新しい世界を始められる機会だった。

しかし散りじりに。 (恩寵の時は過ぎた。もう再び 起こらない。)それぞれが己の道を行く。 おのおのはまた 片面を上にしたドミノになり 繰り返し続くゲームで 合致するもう1片を探す

原作
イェフダ・アミチャイיהודה עמיחי、イスラエル(1924–2000)
原題
The Hour of Grace
出典
Selected Poems』、Penguin Books Ltd1988
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

彫刻
マリー ポール デヴィル シャブロルMarie-Paule Deville-Chabrolle

ことば

その時その時に 愛は特有の ことばを持つ 例えば、私の肩に寄り添う あなたのこめかみの柔らかい軽さや あなたのドレスが滑り落ちる その速さ

原作
ホセ ルイス リコJosé Luis Rico、スペイン(1950)
原題
Lenguaje
出典
Un niño con un reloj a cuestas』、Editorial Eléctrico Romance2017
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

ある歌

行かないで欲しいかのように 私の足元に降着するまで 川や人々の流れを越え いくつもの寺や城を通り過ぎ 民主制のように飛ぶための 羽を欲しがる私の思想を ついばむ鳥達に 何を言いましょう

原作
ハット・フィッシャーHatto Fischer、ドイツ(1945)
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

でも私にはわかる

かつて蝶であったのかな

産まれる前 木であったか          星であったか

もう忘れてしまった

でもわかることは かつてそうであったように   未来にも私は存在する

永遠の中の 瞬きの一瞬に

原作
ローゼ・アウスレンダーRose Ausländer(1901–1988)
原題
Aber ich weiß
詩人の誕生日記念の詩
出典
『Mein Atem heißt jetzt』、Fischer Verlag、フランクフルト・アム・マイン
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

詩心

詩心は 家に窓があるように 自然的

窓硝子のように 人工的

窓の向こう側の世界のように 偶発的

科学のように 論理的

知識獲得と 喪失の 接点にあるようだ

原作
ヴィアチェスラフ・クプリヤノブ/ ロシアВячеслав Куприянов、ロシア
原題
Poetry
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

回想

何時でも舞い戻り私を抱きしめて 身体の記憶が目覚め 昔の憧れで再び血が騒ぎ始める時 唇と肌が思い出し この手でまるで触れているかのように感じる時 愛おしい感覚が戻り私を包み込む

唇と肌が思い出したら、 夜に、何時でも舞い戻り私を抱きしめて

原作
コンスタンディノス・カヴァフィスΚωνσταντίνος Π. Καβάφης(1863–1933)
原題
Επέστρεφε
出典
C. P. Cavafy Collected Poems Revised Editon』、Princeton University Press1992
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

絵画(一部)
クリスティーナ・マイヤブラントChristina Mayrbrandt

至上の美しさ

貴方が守ってくれる魔法の場所へ のがれる 愛する人よ

草たちも お辞儀する 生きている森で

それは この上なく美しいもの

原作
ローゼ・アウスレンダーRose Ausländer(1901–1988)
原題
Das Schönste
出典
Ich höre das Herz des Oleanders, Gedichte 1977–1979』、Fischer Verlag
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

撮影:ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt

詩的な目覚め

星を見つめていた 夜が明けるまで 朝の曙色で、夜の虹彩が閉じた

今見た夢は ただの夢でなく

バラの葉脈の 脈相は

未来を物語る

原作
ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt
原題
Poëtisch Ontwaken
出典
The Ephemeral Flower of TimeDe efemere bloem van de tijd』、POINT Editions2017
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

絵画
ヒゴルカ ゴメス カラスコHigorca Gómez Carrasco

渇仰の詩歌

私は砂漠の砂 渇いた砂漠 君の唇はオアシス 私の飲めない所にある

唇:オアシスは受け入れる 砂漠のすべての砂を

枯渇した世界の 真ん中の湿ったところ 君の身体、君の身体は もう二度と二人のものとならない

身体:渇きと太陽で枯渇した私を潤した 井戸は閉じた

原作
ミゲル・エルナンデスMiguel Hernández(1910–1942)
原題
Casida del sediento
出典
Cancionero y romancero de ausencias』、1942
日本語翻訳
リボアル菜巳乃
※ 英語タイトルは「Casida of the Thirsty」。カシダはアラブ文化の詩歌の形式。この詩は1941年5月にヘルナンデスがオカーニャの牢獄で書いたの最後の詩です。フランコ体制下の独裁時代のアリカンテ刑務所で肺炎にて亡くなりました。

絵画
ヤコブ ボタJacob Bouttats
フランダル
1660–1718

創造まえに

ああ、アダムなれたら 肋骨1がそろい 憧れの女性が まだ創造されず 林檎2の味を まだ知らず 蛇3のささきやを まだ聞かず 裸の羞恥を 気も付かず 名付けてもらう ことを待ってる 優しい創造物たちと 楽園で

原作
スタンリー H.バーカンStanley H. Barkan、アメリカ
原題
As Yet Unborn
日本語翻訳
リボアル菜巳乃
1. 肋骨:旧約聖書で神がアダムの肋骨からイブを作る
2. 林檎:知識の実
3. 蛇:イブに林檎の実を食べるよう勧めた罪

絵画(ギャラリーシリアアート、ニース)
ラビー キーワンRabee Kiwan
シリア
1984

したたる涙

その人は朝に泣き 昼に泣き 夕方に泣いた 朝、息子を失い 昼、もう一人の息子を失い 夕方、最後の家族を失った 翌朝、人々はその人のために泣き 昼にその人々のために別の人々が泣き 夜には泣き声は聞こえなくなった 街中が血の海だった

原作
フセインハバシュحسين حبش、クルディスタン(1948)
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

挿絵
アウグスト・マッケAugust Macke
1887–1914

悪習

毎日 仕事へ行く 妻、オルガのため オルガが買物するに足る金を持てるよう

どうにかしないといけない 週末が近い 日曜日、子供達は食べたいだろう 私たちはこの悪習を 打ち破れずにいる


あの夜に・・・

ねえ、 あなたはこれまでになかった と言う あの夜以上に幸福であったことはないと 決して! 私にそう言った その瞬間に 伝えないと決めたの 自分自身を欺いたのか けれどたぶん 確かに想う あの夜は わたしの人生で最も美しい夜

原作
イデア・ビラリニョIdea Vilariño、ウルグアイ(1920–2009)
原題
Sabés
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

コンスタンスの絵

コンスタンスは筆をとった

果物や野菜が表紙の スケッチブック

さくらんぼを緑色に 塗りつけ バナナは青色に

レタスにおいては黄金色で まるで天国を探しているような筆使い

そして私は想う あまりに現実的でやつれ果ててしまっている 大人たちを

原作
アストリット フュゲリ ガゼンAstrid Fugellie Gezan、チリ
原題
La pintura
出典
Las Jornadas del silencio』、Editorial Nascimento1984
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

守護者に なれる ように あなたの喜びを 預けてください

祈りが 聞こえる 惑星を 周回し 星屑に しています

風の中 散りじりの マントラが 共鳴する時 黄金の穂が 落ちて

そして喜びが 舞い戻る

パンの 香りに

原作
パオラ ペンナッキPaola Pennecchi、イタリア
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

ねこ太陽たいよう

ねこけて 太陽たいようはいった ねこじて 太陽たいようとどまった

ほら、だからよるねこましたとき 暗闇くらやみなかえる 太陽たいようのかけらがふた

原作
モーリス・カレムMaurice Carême、ベルギー(1899–1978)
原題
Le chat et le soleil
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

愛しい文字列

バレンタインデーの日に

満たされた 記憶の中の 目には見えないページ

暗号化され 他の誰も 解読できない

いく度もいく度も 書きなおされた

こころの中の 粘土板

原作
ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt
原題
Tender Characters
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

切望

熱い それは恋

愛へ向け ひた走る

とはいえすべての航行が 抱擁が 待っている 桟橋にはたどりつかない

毎晩 難破船があり

毎朝 浜へ 集められる

沈んだ船体と あふれる 想いが

原作
アルフレッド ペレ アレンカートAlfredo Perez Alencart、ペルー
原題
Deseos
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

サンタ・マリア・ナヴァッレゼ、サルデーニャ
撮影:ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt

湖と岩

ひとりぼっち 澱んだ湖は みるみるうちに縮む

きみは岩 鈍い響きをたてる

でもきみは愛しいひと 溺れさせることを 抑えられない

原作
パショナリア ストイチェスクPassionaria Stoicescu、ルーマニア
原題
Lacul şi piatra
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

渇望

ある時には 至極やさしい ひとことが 欲しい たったひとこと 寒さに耐え 恐怖に耐えられる ひとことが 私を暖め 息苦しさから開放する 重さのないひとこと 平和のひとつぶだけ 背負おう 瞬く間に 飛び去ってしまわないように

原作
ピーター シュウトPeter Schütt、ドイツ(1939)
原題
Hunger
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

ルビーを見つけた 折り重なった石の中で 珍しく光り輝いていた 単なる小石ですよ と、専門家は言う 単なる小石でも 何か特別なものになりたい 原子の唯一の塊 産業の堆積物 何万もの波の数が仕上げた「磨かれた技」   選ばれたと     見て、感じて   何か特別なものになりたい


未来

未来に何が 待ち受けているのか

さらなる戦争 毒ある野望を持つ国々の さりげない会話 哀れな政治家たちよ どこからどこへ向かうというのか 答えはない 一瞬で 高く登ったキノコ雲は 全てを燃え尽くす

原作
ローゼ・アウスレンダーRose Ausländer(1901–1988)
原題
Zukunft
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

撮影:ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt

微光

ひとみの中の きらめく月光

優しくなでる風 ある時はひとこと

手でつつみこむ 抱擁のような

やさしい光 私の心にたいせつなもの

原作
ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

地球上を歩く

地球上を歩く たった一人で 黒い杖を振り上げ 硬い、冷たい地表に 強く押しつける 地球の裏側の人々は このわずかな音を聞きとり 私の存在を感じるかもしれない

原作
チ・チェンChi Chen、中国 台湾(1913)
出典
台湾現代詩『チャイナチャイナ』ISBN90-71152-10-3
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

松の木は孤独に立つ

松の木は孤独に立つ 北の切り立った丘に 安らかに目を閉じ 氷や雪の白い毛布で 覆われている 松の木は椰子の木を夢見る それは東の遥か遠くにある 孤独でつらく声にならない唸り この今も燃えている崖

原作
ハインリヒ・ハイネHeinrich Heine(1797–1856)
原題
Ein Fichtenbaum steht einsam
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

ポグナナ・コモ湖
撮影:ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt

日曜の休息

ツイッターなし フェイスブックなし メールなし メッセージなし

極めて賢いスマートフォンより 賢明なのは

沈黙

原作
ジャーメイン・ドルーゲンブロートGermain Droogenbroodt
原題
Sunday Rest
ポグナナ・コモ湖 イタリア、2015年6月7日
日本語翻訳
リボアル菜巳乃

冬の庭

あなたから送られてきた手紙 黄色と赤の切手が貼ってあり 心の鉢に 植えました 毎日 水をあげたら あなたの手紙は 私の中で育ち 美しくて 悲しい手紙 あなたの匂いがする 手紙 もっと早くに するべきでした 遅すぎる 今ではなくて

原作
エリック・フライドErich Fried、オーストリア(1921–1988)
日本語翻訳
リボアル菜巳乃
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